
【極乃一】移住前の君へ 。
「・・・家、買うか。」少ししてから君が呟く。

農奴の様だと。
月の支払いを確認していた君は、ふと場所に対してのコストが高すぎる、と思った。家賃や住宅ローンなど、居場所を確保する為に人間は莫大な資金を消費している。賃貸に関しては自分の資産でも無い「住む権利」の為に毎月高い額を払い続ける始末である。厭だな。と、思ったのだろう。すぐさま家を買う準備を始めた。幸い、諸事情で場所の制約は無い。「何処にしようか・・・。」そう考えてる様子だった。

1. 建築に重要なのは場所と規模だ。自分に相応しい場所に適切な規模の住宅を求める必要がある。
2. 土地は動かせない。周辺環境は勿論、市区町村の財政状況や伝統、行事なども調べるべきだ。
勢いと同等に知識も大切。
賃貸情報サイトを漁っていると、何件か気になる家が見つかったらしい、そのまま君は現地に飛んで行き、ほぼ直感で決めた古い一軒家を買って戻って来た。こういった事はもう少し慎重に進めるべきなのだが、しかし、直感とは強ち馬鹿にならない。結果的にそこは君にぴったりの家と土地だった。自宅に戻り引っ越しの準備に取り掛かる。放たれた矢の如しだった。
3. 中古物件の目利きは難しいが、まず以下の事柄を確認しよう。・築年数・シロアリ被害・雨漏り・インフラ・残置物の処分負担。取り得ずはこれらの確認を。細かな事は追々説明する。
4. 意外に重要なのがゴミ捨て場までの距離。近いと本当に楽だ。自治会に加入する必要がある場合、自治会費などもかかってくる。会費が月一万円近い地域もあるので注意する事。

切っ掛けを外部に委ねてはいけない。
決断から一ヶ月そこらで君は見知らぬ土地に旅立って行く。行動を起こす際、誰かの合図を待っていてはいけない。口火は自身の内で切るべきだと示している様だった。引っ越し業者に荷物を託し、新幹線からローカル線へ。最寄駅で電車を降りて、見慣れぬ町を眺めながらゆっくりと新居へ向かう。不安が無いとは言えないが、取り敢えず道端の銀杏の巨木は気に入った様子だった。さて、家に着いてもゆっくりはしていられないだろう。やるべき事が山積しているのだから。

5. 引越しの料金はシーズンによって大きく変動するが、確実に言えるのは相見積もりをとった方が良い事。今回は3社同時に見積もってもらい競の様に競い合った結果、上下で10万ほどの差がついた。
6. 他者の力を借りる場合、その人のやり易いを想像するべきだ。運ぶ人がやり易い環境を整えれば作業は早くに終わるし、事故も少なく済む。搬入、搬出の段取りや何処に運び込んでもらうかの指示をきちんと考えないと皆が不幸になる。


居場所は自分で創るモノ。
さて、新天地で先ず君が行った事は、ご近所への挨拶だった。この選択は正しいと思う。購入した土地、屋敷、その周辺環境は動かす事が出来ないのだから。心地よく暮らす為には他者にも心地よく接しなければならない。ぎこちなく挨拶を済ませ、新居に戻り荷物を解いて珈琲を淹れる。据わりが悪い顔をしながら見慣れない部屋を見渡した。こうして、君の長い長い物語が始まって行く。
7. 地方に引っ越すならば事前にその土地の図書館や区役所に行って風習や行事など調べても良いだろう。郷に入れば郷に従う。は、一理あると思う。ただ自分に合わない事に義理で付き合う必要は無い。
8. 人間は協力する事で他生物を圧倒して現在に至る。故に他者とのコミュニケーションは重要だし、見知らぬ土地なら尚更だ。相手の気持ちを想像して適切な対話を行えば八割の人は友好的である。